日本の報道によると、中国で今、一人の女性作家に注目が集まっている。この作家は衛慧(えいけい)さん(27)。代表作「上海宝貝(シャンハイ・ベイビー)」がベストセラーになったが、その大胆な性描写に「性体験を売り物にする恥知らず」などとマスコミから集中砲火を浴びた。これを受けて出版社側は、「自主的な販売中止」に踏み切った。その裏には、当局の指令があると見られており、中国社会が性行動や性描写に関し、依然、保守的であることを浮き彫りにしている。(写真=インタビューに答える衛慧さん)
衛慧さんは、浙江省出身。上海の名門、復旦大学で中国文学を専攻後、新聞社、ラジオ局、外資系広告会社などの勤務を経て、昨年、立て続けに五作の小説を発表した。 「上海宝貝」は、そのうちの一作。「自分自身や友人の体験に基づくもの」として上海で暮らす女性の奔放な性生活が描かれている。昨秋、発売されると、当初想定した二十代女性に加え、性描写に興味を持ったと見られる男性読者をも多数、引き付けた。 中国では、市場経済化が進み、国有企業ですら採算を重視せざるを得なくなっている。出版界にとっても売り上げ増は至上命題だ。衛慧さんの出版元は今回、見事に「売れる本」を発掘、出版したはずだった。 発売当時、芸能ニュースなどを売り物にする夕刊紙などは、「上海宝貝」の人気に目をつけ、大々的に取り上げた。すると、新文学として評価する声が上がる一方、「青少年に悪い影響を与える」「不健全な描写が多い」など、批判的意見も多数、寄せられた。 そして、大衆紙は結局、衛慧さんの「悪玉イメージ」を広める方向に走る。より刺激的な紙面とするためか、衛慧さんの言葉をあえて挑発的にレイアウトしたり、ふてぶてしく見える写真を大きく扱ったりした。 また、中国青年報が「皮膚で感じたことを表現しただけで、彼女は『小説家』と呼ぶに値しない」と酷評するなど、次第に、知識人らに影響力を持つメディアも衛慧さん批判に乗り出す。こうした知識人向けメディアの場合、若者の性行動などに保守的な文壇や教育界など中国社会各層を代弁する形で、世論工作に乗り出したと見られている。 しかし、結局は当局が介入したようで、五月初めに販売中止が発表された。出版元はその後、当局から三か月の営業停止処分を受けた。言論・出版界に対する当局の介入が繰り返される中国の現状を、改めて露呈する結果になった。 衛慧さんは、「決して性描写を売り物にしたわけではない。人間、特に女性にとって性は非常に重要である。作品の中では、タブー視することなく、それを表現した」と語った。急速に変化する中国においての女性の自立や、男性との交際、職業を持つ意味などがテーマだったという。販売中止の理由として出版社は、「低俗な描写」があったことを挙げた。納得できる説明ではなかったという衛慧さん自身、「どうしてこういう結果になったのか」と戸惑いを隠さない。 上海宝貝 上海に住む中国人女性CoCoが主人公。恋人の中国人男性のほか、ドイツ人など外国人男性との交際をストレートな性描写を交えて描く。十四万部の正規発行のほか、海賊版も数十万部出回っていると見られる。

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